緊急度:★★★☆☆
女性の人権と平等の観点、および、長年におよび議論がされている。
進捗度:50% ![]()

社会的議論は進んでいるが、結論または法改正には未だ至っていない。
「選択的夫婦別姓」とは、結婚しても夫婦が同じ姓にするか別々の姓にするかを自由に選べる制度を指します。現在の日本の民法では、結婚した夫婦は必ず同一の姓(氏)を名乗る必要があります(民法750条)。
この制度は、世界的に見ると非常に珍しく、G7の中で唯一日本だけが同姓強制を続けている国です。
なにが問題なのか?
1. 個人のアイデンティティの喪失
- 結婚による改姓は、その人が築いてきた職業上の実績、学術・研究業績、SNSアカウントや出版物の名前との断絶を生みます。
- 医師、弁護士、研究者、芸術家、報道関係者など、名前がそのまま「信用」や「ブランド」となる職種では、改姓による影響は甚大です。
- また、戸籍名と通称名のズレによって、公的手続きや就職時の説明が煩雑になることも多く、結婚が「社会的不便さ」を生む状況になっています。
2. 女性に偏った負担
- 日本では結婚する夫婦の96%以上が女性側の改姓を選んでいます(法務省統計)。
- 法律上はどちらでも改姓可能とされていますが、実質的に女性が改姓「するもの」という社会的圧力が存在しており、制度が性別役割分担を強化する構造的差別の温床となっています。
- この背景には、家制度の名残や「男性の家に嫁ぐ」という慣習が依然として根強く残っており、現代のジェンダー平等と乖離しています。
3. 国際社会との乖離
- 日本は現在、G7諸国で唯一、夫婦が同姓を法律上強制される国です。
- 国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)や自由権規約委員会からも、「女性差別にあたる」として繰り返し勧告を受けています。
- 2015年の最高裁判決では現行制度を合憲としたものの、「国会での議論に委ねるべき」との意見も示されており、国際人権基準と日本の民法とのギャップが顕在化しています。
4. 法的・行政的な不便
- 現在は旧姓使用を一部認めてはいるものの、法律上の名前は婚姻後の姓に固定されます。
- このため、以下のような場面で不整合や手続き上の不利益が発生します:
- 銀行口座名義と本人確認書類(免許証・保険証)との不一致
- 旧姓での業績リストや履歴書の証明の困難
- 海外でのビザ取得やパスポート申請の際の照会手続きの煩雑さ
- 結果として、一人の人間に「2つの名前」が共存し、行政的・社会的な混乱を生み出しているのが現状です。
選択的夫婦別姓制度とは何か?
- 「強制的に別姓にする」のではなく、「同姓を選ぶことも別姓を選ぶことも可能にする制度」が検討されている。
- 現在の制度に加え、「姓を変えない選択肢」を追加するだけであり、既存の同姓夫婦には影響しない。
反対派の主張とその根拠
1. 「家族の一体感が失われる」
同じ姓を名乗ることで「家族であることの象徴」になるという考え方です。別姓になると「子どもはどちらの姓を名乗るのか?」「親子関係の一体感が薄れる」といった心理的懸念が語られます。伝統的な家族観(戸主制に近い意識)を重んじる保守層に根強い価値観です。
2. 「日本の伝統に反する」
明治民法以来の「家制度」の名残を引き継ぐ現行民法(1947年改正)を「日本の家族観」と見なし、これを変えることが「文化や伝統の破壊」だとする立場。特に「夫婦=同じ戸籍に入る=同姓であるべき」とする一体化モデルが“当たり前”とされてきたため、変更への抵抗感が強い。
これらの主張は、選択的別姓が“強制的な別姓”ではないことを無視しているという批判があります。戸籍制度もすでに多様化(国際結婚、養子縁組など)しており、技術的対応は可能だとする法務省関係者の見解もあります。国際的には別姓が一般化していても、家族の一体感や行政制度は成立しており、「戸籍崩壊論」は過剰だという指摘もあります。一部の保守系団体では、戸籍制度そのものが弱体化し、国民管理や身分証明の根幹が揺らぐと主張するケースもあります。
各政党の立場(2024年時点)
- 公明党:かつては慎重な姿勢を示していましたが、近年は「国民的議論を踏まえた検討」を支持し、柔軟な姿勢へと変化しています。ただし、具体的な法案提出には至っていません。
- 国民民主党:選択的夫婦別姓制度の導入に賛成し、独自の民法改正案を提出しています。立憲民主党の法案との違いは、子の姓を婚姻時に決定する点であり、両党は協議を重ねています 。cdp-japan.jp
- 参政党:選択的夫婦別姓制度に反対しています。同党は、家族が同じ姓を名乗ることが一体感や絆を育む重要な要素であり、子供の健全な成長にとって重要であると主張しています 。mainichi.jp+2x.com+2sanseito.jp+2sanseito.jp
- 社会民主党:制度導入に賛成し、労働組合連合会(連合)からの要請にも応じています。福島みずほ党首は、「子が自らの意思で姓を変更できれば、選択的夫婦別姓制度の導入を優先する」という考えを示しています 。jcp.or.jpjtuc-rengo.or.jp
- 自由民主党:党内には賛否両論がありますが、保守派を中心に「家族の一体感の崩壊」や「伝統の否定」を理由に反対する意見が根強く、党としての意見集約は進んでいません 。sanin-chuo.co.jp
- 日本共産党:制度導入に強く賛成し、民法改正案の提出や国会での質疑を通じて実現を訴えています。同党は、選択的夫婦別姓制度の導入が個人の尊厳と平等を保障するものであると主張しています 。jcp.or.jpjcp.or.jp
- 日本保守党:選択的夫婦別姓制度に反対しています。同党は、家族の歴史が道徳心を育むとし、制度導入により家族の一体感が損なわれることを懸念しています 。worldtimes.co.jp
- 立憲民主党:選択的夫婦別姓制度の導入に積極的で、2025年4月には民法改正案を衆議院に提出しました。この法案は、婚姻時に夫婦が同姓または別姓を選択できるようにするもので、個人の尊重と男女の対等な関係の構築を目的としています。cdp-japan.jp+1jcp.or.jp+1
- れいわ新選組:選択的夫婦別姓制度の導入に積極的で、民法改正案を複数回提出しています。同党は、個人の尊厳と多様性を尊重する社会の実現を目指しています。
裁判・政治の動き
1. 2015年 最高裁大法廷判決:「夫婦同姓は合憲」
- 判決概要:民法750条(夫婦は同一の氏を称する)について、憲法24条(個人の尊厳・両性の平等)には違反しないとの判断を示した。
- 多数意見(10人中9人):同姓の制度は合理性があり、違憲ではない。ただし、どちらの姓にするかを選べる余地があることや、結婚自体を妨げるものではない点が考慮された。
- 補足意見:ただし「制度が国民の意識や社会の変化に合わなくなった場合、立法による見直しが求められる」と付言。すなわち、「違憲ではないが、これでよいかは国会が判断すべき問題」と指摘した。
- 反対意見(女性裁判官1名):夫婦同姓の強制は、女性に事実上の不利益を集中させており、憲法違反であると述べた。
2. その後の提訴と動き
- 2021年 東京地裁・大阪地裁などで、選択的夫婦別姓を求める訴訟が相次いで提起されたが、いずれも「合憲」との判決が続いた。
- 2021年 最高裁(再び):再び夫婦同姓制度の合憲性が問われたが、やはり「合憲」と判断。ただし、またしても「制度の見直しは国会で議論すべき」との姿勢を示し、司法としての限界と立法府への責任を強調した。
3. 国会での議論と停滞
- 1996年 法制審議会答申:選択的夫婦別姓の導入を正式に提言。すでに30年近くが経過している。
- 民法改正案の提出(主に野党):
- 立憲民主党、共産党、れいわ新選組などがこれまでに複数回、「選択的夫婦別姓制度の導入」を含む民法改正案を提出。
- しかし、いずれも自民党の反対や審議未了で廃案となっている。
- 与党内の動向:
- 公明党は以前は慎重だったが、近年は「社会の多様性への対応」の観点から柔軟姿勢へ転換。
- 自民党内には強硬な反対派(保守系議員や地方議会など)が多く、党内合意に至らず棚上げ状態が続く。

選択的夫婦別姓法案 きょうから審議 成立は見通せない状況 | NHK
【NHK】国会では、会期末が迫る中、選択的夫婦別姓をめぐり、野党3党がそれぞれ提出した法案の実質的な審議が4日から始まります。ただ…
ソーシャルメディアの反応
参考
- 法務省 選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について https://www.moj.go.jp/MINJI/minji36.html
- NHK “夫婦同姓”定めた民法 日本政府に改正求める勧告 国連委員会https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241030/k10014623351000.html



コメントを残す